2021.4.8

丹巌洞

いつもの散策道から少し西へ足を延ばして足羽山山麓の緩やかな坂になった通りに入ると、鬱蒼とした木立と苔むした庭が目に入りました。
柵で閉じられている門から覗き込んでいると、中から一人の男性が現れました。
「見学されますか?」 「はい、お願いします!」  思いがけず案内されたのは、土蔵のような古い建物でした。

江戸時代(1846年)、笏谷石採掘跡に医師山本瑞庵が建てた別荘で、藩主松平春嶽や橘曙覧はじめ、多くの文人墨客が訪れ、
絵画や墨蹟、漢詩、和歌を残しています。現在は国登録有形文化財となっています。
耳にしていたものの入るのは初めて。入口頭上に掛かる「定」に目をやりながら、見学させていただきました。

入ってすぐの間には多くの品が展示されています。日常使われていたものや、
眼科医であった瑞庵の診療器具(聴診器、丸薬を煉る鉢、ピンセット)など。

ここで詠まれた和歌の短冊も多く残されています。

この草庵は、文人のみならず、志士たちの密会場所であったと伝わっています。
由利公正が、福井を訪れた坂本龍馬と莨屋旅館で語りあかしたことを記した
文書原本が、ここ丹巌洞に保存されているとのことです。

龍馬は後に新政府の財政担当に由利公正を推挙、公正は新政府で
参与として財政手腕を発揮。五箇条御誓文を起草。
後に東京府知事にも就任しています。

ちなみに、公正も曙覧の門弟でした。


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